言葉の教育で子供の力はぐんぐん伸びる!

~もっと伸ばそう、さらに豊かに。国語教育からスタートしよう~

2015年11月17日(火)に、こだま幼稚園つくしの会(保護者の会)主催の講演会が開かれました。その講演録をここにご紹介します。
 
【松田雄一先生講演要旨】
 今の子どもは国語力が低下している。これまでの国語教育のあり方が間違っていたから。国語力を伸ばすには、幼児期や低学年で古典をインプットしてしまうことだ。それには素読が一番の近道。(松田先生のプロフィールは文末にあります)
◆全国学力テストの結果からわかること
 
最新の全国学力テストの結果をご存知ですか? 群馬県は 40位でした。以前は人口の多い地域の方が学力が高いと思われていましたが、このテストが行われるようになって日本海沿岸の地域をはじめとする地方に学力の高い県が存在するとわかってきました。
 
実は核家族化が進んだ地域はあまり学力が高くないのです。また、過剰な平等主義が浸透している地域も競争意識が高まらず学力は伸びません。このように環境によって子どもの学力は左右されます。
 
◆言葉の教育が間違っているかも
 
教育というものは、自分が受けた教育を「標準」「常識」として次世代に受け継いで行きます。私たち大人が学んできたのは現代語による国語教育でした。だからそれが当たり前と思っています。しかし、古典が小学校でも復活しつつあることはご存知ですか?それは古典の有用性が徐々に明らかになってきたからです。
 
日本の国語の教科書は簡単なものから難しいものへと内容が変化していきます。みんなこれが当たり前と思っていますが外国では最初にその国の最も素晴らしい文章を学ぶように作られています。日本の1年生の国語の教科書は絵本と間違えそうなくらいカラフルでイラストがふんだんに取り入れられています。子どもだから難しいことはわからないという大人の考えで作られているのです。
 
「難しい」というのは大人の思い込みであって、子どもは何の先入観もない状態では難しいとは思わないのです。実語教や論語のような古典であっても、与えればどんどん吸収します。かつての日本の教育もそうでした。寺子屋という民間の教育機関では、古典の素読ができないと入塾できないところもありました。現代文重視は直近のたった70年間行われているだけなのです。
 
◆教育の目的とは
 
教育の目的はなんでしょうか。吉田松陰など昔の賢人は、「子供っぽさを捨てて大人になること」だと言っています。自立に向けて育てる、誰かに依存することなく自活すると同時に社会に貢献し、自分の役割を全うできる人にすることです。またそれが自分に課せられていると自覚できている人にすること。義務教育でこれができないと国はほろびます。自立のためには、自律が必要です。自分をコントロールする力です。 自律があってはじめて自立できるのです。
 
欧米流のビジネス用語にWin-Win(ウィンウィン)の関係という言葉があります。取引の相手双方にとって利益があるビジネスのことです。しかし、私たち日本人はあなたと私だけでなく、社会的利益を重視する国民性があります。取引する双方に利益でも、社会に迷惑をかける行為は認められません。こうした日本的な道徳観は正しい国語教育によって培われるものなのです。大きく変更された言語教育を冷静に見直しましょう!
 
◆国語力とは
 
国語力は次の3つからなります。
 
1.語彙力
 
 発音を理解する(言葉の発し方)
 
 意味を理解する(言葉の持つ意味)
 
 表記を理解する(書けるようになる)
 
 =語彙の獲得
 
2.受信能力(読解力・聴取力)
 
 外からの情報を受け取り、その内容を理解する力。
 
 物語では状況を類推・想像する力
 
 優れた受信能力は充実した語彙力の上に成立
 
3.発信能力 (記述力・スピーチ力)
 
 伝えたいことを整理して相手にわかりやすく発信する力
 
 優れた発信能力は優れた語彙力の上に成立する
 
 脳内で論理的に言葉を組み合わせて表現する 
 
子どもの国語力を向上させるには、現在の国語力を考え、何が足りないかを考える必要があります。世代を問わず足りないのは語彙力なのです。
 
国語力向上の基礎は素読にあります。素読とはなんでしょうか。皆さんご存知の音読には素読と朗読があります。ただ声に出して読み上げ、意味は置いておくのが素読です。朗読は内容を理解し、表現方法を考えながら読むことで、とてもハードルが高いもの。けれども、素読は声に出すだけなので非常にハードルが低いです。どんなに高度な文章でも幼児が声にすることはできるからです。
 
日常生活の大部分は言葉を聞き話すことから成り立っています。ですから話し言葉は学校で学ばなくても誰もが身につくのです。とすれば、年齢に合った教育が正しいでしょうか。学校の教材は子どもの能力をはるかに下回った内容となっています。
 
年齢別語彙獲得量の調査があります。それによると8歳から11歳が最も語彙が増える時期です。この時期を逃すと、語彙力をつけるのに時間とエネルギーが必要になります。ところが小学生になってから始めようとしても、言うことを聞いてくれなくなり、うまくいかないことも多いのです。
 
だから、幼年期(2才半~)に難しいものを学び、その段階で理解できそうな現代文を就学してから与え、記述訓練は4年生以上にやると良いのです。
 
子どもは耳から入ってくる音で覚えます。だから素読が効果的です。また素読には別のメリットもあります。それは、聞き・話すことで言葉の第一段階のインプットが終わってしまうのです。意味がわからなくても構いません。再度その言葉に出会ったとき、強く反応してその言葉に強く関心を持つきっかけとなるから。
 
◆言葉の役割とは
 
言葉の役割とはなんでしょうか。受信・発信は伝達手段です。自律・自立は精神の発達をもたらします。心を成長させる言葉は心の糧となります。格調の高い古典をインプットすることで、心を豊かにする基礎を築くことができるのです。人は一生で一番多く自分に話しかけています。それが考えるということ。言葉が豊でないと考える力がつきません。
 
大学生の国語力の低下を嘆く大学の先生が増えています。国語のテストをしてクラス別編成で国語の授業をしている大学もあるそうです。国語はコンピュータでいうところのOS。すべての教科の基礎となるもの。国語力が高くないと他の教科の成績も伸びません。英語のできる人は間違いなく国語もできます。英語の先生が国語力をもっと上げて欲しいと言っています。
 
国語力を決めるのは家庭環境です。学校での国語の授業時間は年間たったの850時間しかありません。それに比べて小学生のテレビ視聴は年間1,000時間以上であり、圧倒的にテレビに強い影響を受けています。国語力が下がって当然なわけです。フランスでは低学年の授業の約5割がフランス語の時間に充てられています。
 
今、小学校では辞書引き教育が盛んです。低学年に辞書は不要です。だって易しい言葉を難しく説明しているのですから。辞書を引いたら益々わからなくなってしまいます。言葉は生きているので、聞いてきたらその場で教えると良いのです。
 
言葉において、発音は空のコップで、意味は注がれる水に相当します。先に器を準備しておけば、いずれ中身が埋まります。
 
読解力のばらつきはどこから来るでしょうか。早生まれはかなり不利です。3月生まれと4月生まれではほぼ一歳違いとなり、5才児では25%の差でこれは大きなもの。でも疑似体験でその差を縮めることができるのです。例えば買い物に連れて行って旬のものを見せて、それについて話して聞かせること。
 
素読は聞いていないと発音できないので、言葉の内容を聞き取れる子にできます。反対に話を聞かない子にするのは簡単です。同じ言葉を短時間に何度も繰り返せば良いのです。1日の内に母親が発する言葉を調査した人がいます。それによると最も多く発せられた言葉は「はやく!」です。なんと平均して1日に70回も「はやく!」と行っていました。最高では150回。
 
子どもには難しすぎるから。子どもが嫌いと言っているからと子どもの言いなりになってはいけません。子どもの一生に必要なことは、親が考えて決めてやりましょう。物分りの悪い親になることが子どもを伸ばします。
 
人間学には本学と末学があります。本学とは生き方、考え方を学び、末学は実学、技術を学びます。古来から本学が第一番とされ、生きる上で心の糧となる良い言葉がたくさんあります。それが現代では実学が役に立つということで、本末転倒の状況になっています。素読では本学を学びます。
 
平成28年1月31日よりこだま幼稚園で素読教室開催することになりました。みなさんのご参加をお待ちしています。

講師紹介 松田 雄一(まつだ ゆういち)
プロフィール

昭和52年3月、広島生まれ。  明治大学農学部卒。に進学。学習塾の教務職を経て、素読教室を開催。 
 
著作

「日本人OSインストールガイド(著者:松田雄一)」広島まほろば学習会
top